2019.10.03 Thu

Written by EDGE編集部

Jリーグ&国内

久保田コラム「日本語のサッカー指導で世界をひっくり返す(1)」和訳サッカー用語と本質のズレ

「ひとつの言葉で様々な情景を連想することのできる『日本語』を、サッカー用語に置き換えて、具体的に指導していくことで、日本サッカーの発展を加速させることができると信じて実践しています」と語る、久保田大介氏の新コラムがスタートします。 

サッカーを日本語で語ろう。

「納豆と豆腐って、実はネーミング逆らしい」という話を、昔ある人から聞いたことがある。

彼いわく、本来ならば、今、僕らが「納豆」だと思っているものは、豆を腐らせたものだから「豆腐」と書くはずで、僕らが「豆腐」だと思っているものは、豆(大豆)が納まっているものだから「納豆」のはずだ、と。

それなのに、昔中国から日本に入ってきた時に、誰かがこの二つの名前を間違えて、ひっくり返して使い始めちゃった、という由来らしい。

それを聞いた僕は完全に目からウロコで、ことあるごとに飲み会などで豆腐が出てきた時にこの豆知識を女の子に対して披露し、時には感心され、時には「だから?」とドン引きされたものだ。

そんなことはどうでもいい。

今回は、日本サッカー界における「納豆と豆腐」の話を書いてみたいと思う。

 ——————–

サッカーが日本に入ってきた時に限らず、スポーツ全般において「Offense(オフェンス)」を攻撃、「Defense(ディフェンス)」を守備、と訳してしまったのが、そもそもの間違いだと僕は思っている。

Offenseを「攻撃」、Defenseを「守備」と訳し、その文字の見た目と響きのままに解釈してしまい、何の疑問もなく指導現場でもメディアでも使われてしまっているから、日本のサッカーは今でも、ちょっと厄介なことになっている。

サッカーをプレーし、サッカーを理解するべき子どもたちが、間違った言葉の解釈をそのまま伝えてしまう指導者のせいで、正しいプレー解釈ができていない子が多いのだ。

日本では「才能」と言われ、てもてはやされた選手が、いざ海外のクラブに移籍した時に「お前はフットボールを理解していない」と言われ、「海外に来て、初めてサッカーを学んだ気がする」と語る選手がいたり。

その原因の一つに、言葉の解釈の間違いがあると、僕は確信している。

今回はわかりやすい例として「攻撃」「守備」というキャッチーな言葉について書くけれど、これらの言葉だけでなく、日本のサッカー界で使われている「和訳された言葉」の読み方、解釈、捉え方をサッカーの本質と照らし合わせた時に、かなりのズレが出てきている気がするのだ。

 

攻撃とは

「攻撃」は「攻めて撃つ」と書く。これを相手ゴール前の最後の部分に用いるのならば、まだいいだろう。(それもおかしいと僕は思っているが)

しかし自陣で相手ボールを奪った時から「いざ、攻撃!」と思ってしまうと、相手やスペースの関係性を無視した、緩急のない「特攻」となってしまって、奪い返されて傷口を広げるのが関の山だ。(もちろん、数的優位時のカウンターならば話は別かもしれないが)

相手からボールを奪ったのならば、まずは「保持」しながら「脱出」をし「前進」と「翻弄」を織り交ぜながら「侵入」する。そして最後に「攻撃」だろう。

そこの流れを全て一括りにして、状況や場所を問わず「攻撃」と訳してしまうのには違和感があるし、現場目線で言えば、サッカーを始めたばかりの子たちやジュニア年代の子たちに「さぁ、攻撃だ!」と、僕は口が裂けても言えない。

ボールを奪ったのならば、まずは「攻撃!」ではなく、他に観るべきもの、やることがあるだろう?と言うべきだ。さらにボールホルダーだけでなく、他の味方は何をしなければいけないのかも含め(むしろそっちの方が重要)、考えるべきこと、理解しなければいけないことは多岐にわたる。

何を考え、何を観て、何をやるべきか?

そこを、指導者は大雑把で短絡的なワンイシューの言葉ではなく、自分の言葉で、わかりやすく伝えなければいけない。

 

補足〜攻撃という言葉を用いるなら

「相手のボールを攻撃する」これの方が、僕はしっくり来る。

つまりディフェンス時。相手がボールを持っている時に、相手ボールを「攻撃」して奪うんだ、と。

相手がボールを持った場面において、これまで日本の少年サッカー界に蔓延ってきた悪しき習慣として「足を出すな」「遅らせろ」というワードがある。

しかしながら、遅らせていたら相手に余裕を与えて、好きなことをされてしまう。ならば、邪魔できる場所までしっかり寄せて、隙あらば足を出してボールを奪えばいい。

うちのクラブには、他の少年団に所属しながら、平日のスクール替わりとして、うちの練習に参加している子が結構いる。そういう子の大半は、必ず相手の前で腰を落として、寄せ切れず、ジリジリ下がりながらディフェンスをしようとする。その度に僕はその間違いを指摘するのだけれど、やっぱり、まだまだ根深い問題だ。

相手ボールは遅らせるものではなく、積極的に奪いにいくもの。ましてやジュニア年代ならばガツガツ行かせて、成功と失敗を繰り返させながら、本当に奪える間合いやタイミングを覚えさせなきゃいけない。

だからそんな子たちに最適なのが「相手のボールを【攻撃】してごらん」という言葉。これを言うと、子どもたちは喜んでガンガン行くようになる。

そして相手ボールへの【攻撃】は一矢だけではなく、二の矢、三の矢と続く。だから一人目がかわされても、二人目、三人目で奪うことができる。

相手にボールがある時こそ、攻撃。これ、ぜひ子どもたちに言ってみて下さい。

 

守備とは

「守備」は、文字通り「守る」「備える」と書く。ここの読み方(解釈)を少し変換すれば「守りに備える」とも読める。

尊敬する方が言っていた。

「ディフェンスの順番として、まずやることは【ボールを守る】ことや」

相手に奪われない持ち方、つなぎ方、前進の仕方。そして奪われてもすぐに奪い返せる仕組みの中で、オフェンスを展開する。

「切り替え」という言葉は「攻め」と「守り」が分かれているという認識があるからこそ使われる言葉であって、最初から守備をしておけば、いちいち切り替える必要もない。切り替えるのではなく、最初から、奪い返せる状態が備わっている。

「ディフェンスは、自チームがボールを持っている時から始まっている」という考えでスタートすれば、【守備】という言葉の本当の意味が見えてくる。

つまり自チームがボールを持っている時こそが【守備】であり、守りに備えながらボールを持つ、そしてゴールを陥れていく… ならばオフェンスをどう仕組んで展開していくか、という理論や志向の話へと繋がっていく。

チームの哲学は、そうして生まれていくものではないだろうか。

 

結論

オフェンスは「攻撃」ではなく、ディフェンスは「守備」ではない。

自チームにボールがある時と、ない時。ただそれだけに分けてゲームを捉えるのが、ベターなのではと個人的には思っている。

あえて使うならば

「攻撃」は、こちらがボールを持たない時。相手のボールを攻めに行く。

「守備」は、こちらがボールを持った時。

文字通りボールを「守」りながら、ボールが相手に渡った場合に「備」えつつチャンスを伺い、相手の間をすり抜け、かいくぐり、虚をつき、最後はゴールを陥れる。

攻撃だ、行くぞー、進むぞー、となるから緩急のないサッカーになるし、守らなきゃ…となるから、腰が引けてボールを奪いに行けない。

ボールのない時が攻撃

ボールのある時が守備

この概念で子供の頃からサッカーをしたら、日本のサッカーはひっくり返るんじゃないか。

そんな妄想をしているけれど、妄想で終わらせるのではなく、僕はそれを自分の手で証明したいと思っているし、この意見だけが正しいと信じ込まずに、いろんな方のアイデアをたくさん知りたいし、参考にしていきたいのです。

そうやって、日本サッカーの進化に少しでも寄与できたら。

次回はより具体的に、技術の部分についての「翻訳まちがい」について書こうと思います。

 

追記)

冒頭の「納豆と豆腐」の話ですが…。よく調べてみたところ、中国では「腐」という言葉には「腐る」という意味はなく 「ブヨブヨしたもの」という意味があるそうで。

なので、豆腐は豆が腐ったから「豆腐」と名付けられたのではなく、 豆を加工してブヨブヨしたものだから豆腐なのだと。

そして「納豆」は、お寺の台所、すなわち納所で作られた豆だから「納豆」なのだという説もあるそうです。

そうだったのか…。言葉の由来、そして解釈は様々。サッカーにおける言葉の数々も、もう一度見直して、解釈や認識を改めて考えてみるのも面白いですね!

 

●プロフィール

久保田大介

サッカーコーチ
ロボスフットボールクラブ・代表(
https://www.footballnavi.jp/lobos/

 

過去の久保田コラムはこちら

 

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