2019.03.12 Tue

Written by EDGE編集部

育成・トレーニング

話題作『興國高校式Jリーガー育成メソッド 』(竹書房)の一部を無料公開!

2018年12月に出版し、大きな話題を呼んでいる『興國高校式Jリーガー育成メソッド ~いまだ全国出場経験のないサッカー部から、なぜ毎年Jリーガーが生まれ続けるのか?~」(竹書房・刊)。フットボールエッジでは特別に、本書のまえがきとあとがきを掲載する。目次のタイトルだけでも育成や指導の参考になる言葉が並んでいるので、ぜひ目を通してほしい。 

〈はじめに〉

12――。僕が興國高校サッカー部の監督になったときの部員の数。3学年でたった12人しかいませんでした。2006年のときです。

12――。2018年現在、興國高校を卒業し、プロになった選手の数です。

興國高校サッカー部の監督になって12年で、当時の部員数とプロになった選手の数が同じになりました。

興國高校サッカー部は、これまで一度も全国大会と名のつくものに出たことがありません。夏に開催される全国高校総体(インターハイ)、冬に開催される全国高校サッカー選手権大会に、一度も出たことがありません。

でも、毎年のようにプロになる選手が出ています。
 
ちなみに、2017年度の卒業生は3名、2018年度の卒業生も3名の選手がJリーガーになります。さらに、大学経由でプロになる選手もいます。

「なぜ、全国大会に出たことのない学校から、毎年のようにプロ選手が誕生するのですか?」

最近、このような質問をよくされます。

そのたびに「その話をしたら、3日ぐらいかかりますよ(笑)」と、答えてきました。 それぐらい、たくさんの試行錯誤を重ねてきたからです。

監督就任当初は部員が人で、高校からサッカーを始めた選手が7人。

学校にサッカー部が使えるグラウンドがないので、部員の母校の中学校にグラウンドを貸してもらい、練習をしていました。照明は無かったので、街灯を頼りに、 薄暗い中でボールを追いかけていました。

それが、興國サッカー部の原点です。

そんな状況からスタートして、毎年複数人のプロを輩出するまでにいたった過程を、この本では隠すことなくすべてお伝えします。

おそらく日本のどこかで、昔の僕と同じように、サッカーの指導に情熱を注ぎ、試行錯誤している指導者の方はたくさんいると思います。

同じように、「プロになりたい!」と願う子どもたち、「子どもの夢をサポートしたい!」という熱意を持った親御さんもたくさんいるでしょう。

そのような方々の参考になる話ができればと思っています。

 

興國サッカー部カバ-

 

目次

第1章 プロになるために必要なこと

・小学生時代で全国大会に出ていない選手がプロになる
・プロになるために必要なハングリー精神
・有望な選手はあえてトレセンに行かせない
・J2からステップアップするキャリアアッププラン
・サッカーだけではなく、スポーツ万能タイプがプロに行く
・興國オリジナルの「ボールコーディネーション」
・ジダンやイニエスタの動きを研究
・様々なポジションでプレーさせる意味
・世界で活躍するために必要な「スピード」
・50メートル5秒9のレフティをボランチで起用
・手の骨折が転機になった村田透馬
・セレッソ大阪から転入した中川裕仁
・日本人のストロングポイントは敏捷性
・高体連かJクラブか
・大学経由でプロに行くタイプは?
・ネームバリューだけで選ばない
・世界で活躍したければ、外国人であることを意識せよ
・選手が前向きに取り組む環境を作る
・「興國の選手には野心がある」という評価
・チャレンジを続けて武器を磨く
・プロになるのではなく、プロで活躍することが目標

第2章 興國サッカー部の流儀

・部員は270人、全部で7チーム
・希望者は中3から練習に参加できる
・スペイン遠征で真意に気づく
・エコノメソッドの指導
・地域に根ざしたチーム作り
・7人のキャプテンでメンバーを決める
・振り返りLINEで考える力をアップ
・ボールを繋いで責任を繋ぐ
・試合に出られる基準を明確にする
・大型でスピードのある選手を育てる
・FWでプロになるためのメンタリティ
・プロになりたいから興國に来る
・プロになった選手が歩んだ道のり
・FWからサイドバックにコンバートして プロになった起海斗
・チャレンジするプレーはミスしてもOK
・九州遠征で相手チームに取り囲まれる 高校時代に彼女を作ろう!
・セレッソ大阪と提携し、指導者を招聘
・半年でサッカーに飽きる
・稲本潤一との出会い
・トレセンでレベルの差に愕然
・背番号14のスーパースター
・卒論のテーマはフランス代表のサッカー
・多大な影響を受けた、中学時代の恩師
・練習中に選手にキレる
・韓国式サッカーで勝利への執着心を植え付けられる
・決めごとがない大変さを経験
・サッカーと人間教育
・常に謙虚でいる努力をする
・オリジナリティと差別化
・見た目のかっこよさも重要
・ウェアに独自のメッセージを入れる
・ジーパン監督と呼ばれて

第3章 プロになるための進路の選び方

・3年後の自分をイメージする
・自分はどんな選手になりたいかを考える
・練習参加で衝撃を受ける
・高体連に進むメリット
・保護者は子どものカーナビにならない
・子供の不満を聞いてあげる
・プロに進む選手の保護者に共通すること
・親の言動で子供のチャンスが潰れる
・家庭環境が子供のプレーに及ぼす影響
・身体を思い通りに動かす練習をする
・サッカーの試合を見てイメージ力を高める
・特徴的な武器を身につけてほしい
・小中高でプレーモデルがぶつ切りになる
・上のカテゴリーで異なるスタイルになると、特徴を活かしきれない問題
・生き残るのは変化に適応できる選手

第4章 日本のサッカーが強くなるためにすべきこと

・「育成のプロ指導者」の必要性
・生活のために大会で結果を出さなければいけない環境
・サッカーにお金はつきもの
・日本の指導者が評価されるのは、大会で優勝したとき
・環境の悪い中で試行錯誤する
・トレーニングを真面目にしすぎ?
・組織の中で個を出させることの難しさ
・低年齢から戦術面の指導をする
・高校3年生までは筋トレ禁止
・プロになる選手を見極める
・アピールの仕方がわからない日本人選手
・スペインで感じた、日本人のストロングポイント
・スペインの監督に驚かれた持久力
・ハイインテンシティトレーニング
・サッカーは対応力が必要なスポーツ
・日本サッカー界に必要な、良い選手の基準
・年代別代表をW杯に繋げる
・国際経験の重要性を痛感
・アメリカの大学スポーツを見習うべき
・学校を軸に、地域と連携した選手育成
・ビジャレアルで感じた可能性

 

 

〈あとがき〉

2018年度の高校サッカー選手権大会・大阪府予選ではベスト16で大阪桐蔭に敗れ、全国大会出場は叶いませんでした。

負けはしましたが、嬉しかったことが2つあります。

ひとつは、会場のJ GREEN堺に、たくさんのお客さんが見に来てくれたこと。あるとき、J GREEN堺のスタッフにこう言われたことがあります。

「試合を見に来るお客さんに、『興國の試合はどのグラウンドですか?』と聞かれたら『一番、人がたくさんいるところ』と答えるようにしています。そう言って、外れたことがないんです」

和田達也(栃木SC)が在学中の2011年頃から、興國のサッカーに興味を持ってくれる人が増え始め、J GREEN堺で試合をするときは、たくさんの観客が詰めかけるようになりました。僕たちが作りあげた興國スタイルに共感してくれる人が増えたこと、興國のサッカーを面白いと思ってくれる人が増えたことは、監督としてとても嬉しいことです。

興國に入学した選手たちは、2年半をかけて「興國サッカー部が理想とするプレー」ができるように、トレーニングをしていきます。それが完成形に近づくのが、高校3年の夏を過ぎたあたりです。

夏以降、3年生のプレーを見ていて「うまっ」「すごいな」と思わず声が出てしまうことがあります。毎日、練習を見ている僕が面白いと思うぐらいなので、試合を見に来たお客さんは、もっと楽しんでもらえているのではないかと思います。

チームが完成形に近づくと、選手たちのプレーがより一層スムーズになります。その段階になると、僕もベンチから逐一コーチングはせず、基本的には自由にプレーさせるので、選手たちから自由な発想がどんどん出てきます。秩序の中で判断スピードが上がり、余裕が生まれるので、驚くようなプレーが連続します。彼らのイマジネーション溢れるプレーを見て「こんなプレーができるんや!」と驚く毎日です(笑)

高校サッカー選手権予選・大阪桐蔭との試合中、選手たちはセットプレーなどで試合が止まる度に、「今日の試合、めっちゃ楽しいわぁ」と言っていたそうです。それを聞いたときに「プレッシャーのかかる舞台でも、楽しんでサッカーをしてるんやな」と嬉しくなりました。試合に負けた後はみんな泣いていましたが、そこには清々しさがあったように思います。

チェルシーのサッリ監督が「心の中のサッカー小僧は、いつまでも大切にしなければいけない」と言っていましたが、彼らのプレーを見ていて、改めてそう感じました。 

 

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興國は毎年プロ選手を輩出していますが、高卒でプロになれるのはほんの一握りの、限られた人だけです。その他の、99.9%の人は高校を卒業して、進学したり、社会に出て行きます。サッカー選手ではない、いわゆる『普通の人』がどれだけサッカーが好きか。その度合いは、これからの日本サッカーの普及や強化、そしてサッカーが文化として根付いていく上で、とても大切なことだと思います。

僕が高校時代に体験したような、厳しいだけの指導を受け続けた結果、大好きなサッカーを嫌いになり、高校卒業と同時にサッカーを辞めてしまうケースが後を絶ちません。

興國サッカー部のスローガンは「ENJOY FOOTBALL」です。高校時代、苦しい思いをして勝つ喜びを味わうのも大事ですが、僕としてはそれよりも「サッカーは楽しいものなんだ」と体感して、卒業していってほしいと思っています。

サッカーは楽しいものなんです。だから僕は、選手たちが高校を卒業した後も、1年でも長くサッカーを続けてほしいと思っています。プロ、社会人、大学の体育会系、サークル、草サッカー、友達とのフットサル…。レベルはなんでもいいんです。将来は自分の子どもや孫にもサッカーをさせてほしい。

そのためにも、サッカーを嫌いになって終わるのではなく、サッカーが好きだ、楽しいなと思ってもらえるように、日々、指導にあたっています。

2018年度の3年生90人中60人が、大学や社会人でサッカーを続けます。残りの30人も高いレベルでプレーはしないまでも、大学のサークルなどでサッカーを続けてくれます。
だから、11月に高校サッカー選手権の予選が終わった後も、部活を引退せずに練習に来ています。彼らに高校卒業はあっても、サッカーからの引退はありません。

高校サッカーは楽しいことばかりではなく、ときには我慢しなければいけないことや、大変なこともたくさんあると思います。

だけど多くの選手達は、高校3年間の中で、楽しんでサッカーをしてくれているのではないかと思います。

「ENJOY FOOTBALL」

この言葉を忘れずに、いつまでもサッカーと向き合っていきたいと思います。

最後になりましたが、何もない僕みたいな指導者に「本を出しませんか」と声をかけてくれた、竹書房の柴田洋史さん。僕の考えを、完璧なまでに言葉にする手伝いをしてくれた、スポーツライターの鈴木智之さんに感謝を申し上げます。

そして何より、サッカー漬けの毎日の僕をサポートしてくれる、妻と家族に、ありがとうと伝えたいです。

2018年末 内野智章

 

 

 

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