2017.11.22 Wed

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

部活動の“外部コーチ”を19年経験した筆者が思う、外部コーチと学校の理想的な関係【久保田コラム】

以前、このコラムで自身の経験も含めて、部活動の問題について書きました。今、部活動に問題を抱えている学校は多いと思いますが、その要因の大部分は、学校側・先生側にあると、僕は勝手に思っています。外部コーチを受け入れない閉鎖的な体質。受け入れても、単なる駒のように扱う顧問の先生たち。それを知らぬ存ぜぬで隠蔽して済まそうとする管理職。それにより、心も体も傷つけられている外部コーチの存在を、多く知っています。(文・久保田大介/スエルテ横浜)

当時のコラムでも、主に教員側の「やる気のなさ」と「閉鎖性」について書きました。

ただ、そんな先生ばかりではないです。

1998年にコーチとして独り立ちし、スエルテというクラブを立ち上げてから現在までの19年間、僕はスエルテでの指導の傍ら、いくつかの学校で「外部コーチ」として部活に関わりました。

指導チームは数回変わりながらも(掛け持ちもあり)19年間、部活動の外部コーチをしていなかった時期は一度としてありません。

嫌なことはたくさんありながらも、「部活動」そして「学校現場そのもの」に、大きな魅力を感じていたからだと思います。

理解ある先生たちや学校側のスタンスのもと、魅力的な活動をしている部活動もたくさんあります。

全国の部活動をこれからもっと魅力的にしていきたい。そんなメッセージも込めて、今回のコラムでは、自分が最初に外部コーチとして携わった中学校での話を書こうと思います。

———————-

この中学校は、自身の出身校でもある、世田谷の中学校でした。

そこではサッカー経験のない先生が顧問を務めていました。その先生だけではサッカーの指導に限界があるということで、自分に話が回ってきたのですが、その先生がとてもオープンな方で、指導に関しては僕に全権委任してくれました。そして事務的なことや生徒のフォローを、先生がしてくれる。

今考えれば、最初に携わったサッカー部で理想的な環境を体験してしまったからこそ、後々、他の学校で体験する理不尽な仕打ちや閉鎖的な学校、先生たちに、我慢ができなくなってしまったのかも。

そう思うほど、この先生はこちらを尊重してくれたし、理解を示してくれました。本当にありがたかったです。

その先生だけでなく、当時の教頭先生が僕を気にかけてくれて「午前中の時間を有効活用しないか」と、事務員として雇ってくれて、外部コーチの自分を職員室に迎え入れてくれました。

この職員室で過ごす時間が僕は大好きで、先生たちといろんな話をしたり、時には相談に乗ってもらったり。学芸発表会を終えた夜から出かける職員旅行にも、一緒に参加させてくれました。

2002年、日韓ワールドカップの「日本 対 チュニジア」は平日の昼間に行われたのですが、授業のない先生たちと職員室で一緒に観たり、校長室に生徒を招き入れて一緒に観たりしたんですよね。日本が先制したら、体育館で授業をしている先生や生徒たちに、僕が走って報告しに行ったり (笑)

そんな家族のような一体感が、この中学校にはありました。だから学校全体の雰囲気、生徒たちの雰囲気もとても良かった。僕もサッカー部以外の子達からいろんな相談を受けたり、ただただバカ話をしたり…と、そんな時間が大好きでした。

当時のこの学校以上の「学校現場」に、僕はその後も出会ったことがありません。今思えばこんな学校は稀でしょうし、そんな環境で仕事ができた僕は、恵まれていたんだと思います。

 

■サッカー部と野球部の合同練習

その中学校で野球部の顧問をしていた先生がいるのですが、その先生がまたオープンというか柔軟というか、とにかく懐が大きい方で、当時サッカー部のコーチだった自分に「野球部と合同練習してくれない?」と持ちかけてくれました。せっかく同じ学校の部活なんだし、しかも同じ球技なんだから、どこか通じるものがあるだろうと。その内容も、僕に全て任せてくれて。

こんな先生、なかなかいないですよね。

この先生とは今でも付き合いがあり、教育に関して相談させてもらったり、貴重な話を聞かせてもらう機会を持たせてもらっています。

この先生だけでなく、他の先生たちも名目は「外部コーチ」である自分を「外部」扱いせず、同じ学校で生徒たちと関わる「内部コーチ」として、皆が尊重してくれました。

この学校で過ごした時間と、先生たちの協力と、受け入れてくれるオープンさは、今でも自分の大切な思い出として残っています。全ての学校がこうであったら、いいんですけどね。

 

■都立高校女子サッカー部での出来事

2004年の冬からは、縁あって都立高校の女子サッカー部でも外部コーチをしました。その高校では11年間も続けることになったのですが、それも、顧問の先生たちの協力があったからです。

2004年当時から、数えて3人の先生が「メイン顧問」として関わってくれました。3人ともサッカー経験はなく、前出の中学校と同様、グラウンドでの指導は全てこちらに任せてくれて、事務的な運営や生徒のフォローを先生がやってくれる、という理想的な関係を築くことができていました。

夏の練習時間を涼しい時間帯に移せないかと、僕が学校側に直訴した時「女子サッカー部だけ特例を認めるわけにはいかない」という紋切り型の対応をしてきた学校側に対し、最後までこちら側に立って、一緒に戦ってくれた先生もいました。

そういう先生たちは、いくら忙しくても練習の最後には必ずグラウンドに来て、選手たちや僕とコミュニケーションをとってくれます。

そういう姿って、選手たちは必ず見てるんですよね。サッカーの技術的な指導はできなくても、そんなスタンスでいてくれる先生たちのことを選手たちは絶対に信用するし、信頼もする。

3人目の女性の先生が他の高校へ異動して、4人目の顧問の先生(たち)が、前回のコラムに書いた「外部コーチのことを一切尊重してくれず、駒のように扱う人たち」であったため、僕はその高校での指導を辞めることになった(辞めさせられた)のですが。

 

■良い先生に共通する姿勢

その高校での外部コーチを辞めた後、昨年春からは湘南地域にある私立中学のサッカー部で週に一度、指導に関わらせてもらっています。

その先生は野球出身の方なのですが、とてもサッカーを勉強していて、きっと練習もしたんでしょう。普通に上手い(笑)。試合中のコーチングの内容なども、とてもサッカー未経験の人とは思えないほどです。

週に一度行くだけの自分ですが、やはりその日は全て練習をこちらに任せてくれて、一切口出しもしません。いくら忙しくても、練習の最後には必ず、グラウンドに顔を出してくれます。信頼できる人とそうでない人の違いは、ここかもしれませんね…。

この先生は、こちらを尊重してくれるだけでなく、ご自身の指導での悩みや葛藤を、素直に話してくれて、相談までしてくれます。今までいろんな学校で多くの顧問の先生に出会ってきましたが、こんな方はなかなかいません。

先日も、週末行われた試合についてメールで詳しく報告してくれて、そこで感じた課題や思いなどを素直に伝えてくれました。それを読み、僕がその日の練習を考えて実行し、練習後にはまた2人で話をして、今後に向けて対策を練ったり。

今、こんな環境で外部コーチをできている自分は、かなり恵まれているほうだと思います。

ここまで書いて来て、結局、良い先生たちに共通しているのはオープンで、柔軟で、外部コーチのことを「外の人」ではなく「内部の人」として見てくれて、そのように接してくれる、懐の大きさです。

そんなスタンスでいるのだから、生徒たちに対しても、当然それは伝わります。皆、生徒たちから信頼されている先生ばかりでした。

今、部活動に関してもっと外から指導者を受け入れて、先生たちの負担を少なくしようという流れになっているとは思いますが、肝心の学校現場が閉鎖的で外の人をなかなか受け入れない実情(空気)があるのなら、結局は机上の空論です。お互い不幸なままです。

今回書いたような先生のもとであれば、外部コーチは力を発揮できるんです。でもそうではない現状が多い。

お互いがオープンになって、もっと良い方向へ持っていければ良いと思うのですが。

鈴木大地スポーツ庁長官が、このコラムを読んでくれることを願ってます。それとも林文部科学大臣かなぁ。

【プロフィール】
久保田大介。ジュニア年代からジュニアユース、高校の女子サッカー部を指導するプロコーチ。指導者の学びの場”Borderless” football community主宰。

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