2017.08.30 Wed

Written by EDGE編集部

Jリーグ&国内

ワールドチャレンジのバルセロナに見る、育成哲学の重要性と日本サッカーの伸びしろ

8月27日に行われた、ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017決勝戦。FCバルセロナが2年連続4度目の優勝を果たした。筆者は今年、準決勝2試合、3位決定戦、決勝戦の計4試合を取材した。そこで感じたことを、フットボールエッジ読者のみなさんとシェアしたい。(文・写真 鈴木智之/フットボールエッジ編集長)

バルサと日本のチームを比較すると、バルサの選手たちは「チームコンセプトの元、その状況で何が適切なプレーかを判断しながらプレーしている」印象を受けた。一方、日本の選手たちは「個々人の判断の元、個人のがんばりでプレーしている」ように見えた。

バルサには、各局面で狙いとするプレーがある。各ポジションの選手はピッチのそれぞれの位置で、チームのコンセプトに合ったプレー基準のもと、パスをしたりドリブルをしたりする。そのため、周りの選手は「この選手がここでボールを持ったら、自分はここのスペースに走ろう」という判断ができる。

各選手の判断が連なり、チームとしてボールが動く。それが局面で相手を打開する高い技術やフィジカルとあいまって、相手のゴールを割ることができる。

そのため、記者席からバルサの選手のプレーを見ていると、この選手のポジショニングが良かったから、ビルドアップができた。中盤で前を向いてボールを運ぶことができたといった基準のもとに、選手がくだした判断やプレーの実行(ドリブル、パス、キックなど)の良し悪しを見てとることができる。

翻って日本の選手達はというと、がんばって走ってはいる。がんばってドリブルで局面を打開しようとしてもいる。しかし、すべてが個人の判断、プレー選択に任され、個でのみ、目の前の相手と戦っているように見える。

もちろん、何人かはバルサの選手のように、周囲との連携のもとに局面を打開しようとしてはいたが、あくまで個人のアイデアにとどまるので、味方が反応してくれればプレーが成功するが、チームメイトとの連携がとれないとうまくいかない。そして再現性がないので、次に同じ局面になったからといって、そのプレーを選択するとも限らない。

 

バルサ4

 

バルセロナは、最終ラインのビルドアップはこうする、ここにボールがある時、ウイングはこの体の向きでこの位置に入る。FWはこのスペースに降りてきてボールを受けるといった、局面に応じたいくつかのコンセプトがある。再現性があるため選手が連動しやすく、プレーの良し悪しが判断しやすい。

そうしたコンセプトにもとづいた各ポジションの選手達の判断、その共有の積み重ねで、最終ラインから中盤のライン、相手の最終ラインと突破して行く。対する日本は、個々のひらめきによってのみ、攻撃を仕掛けていく。チームとして1+1が2以上になるバルサと、1+1の関係性のみで戦う日本のチーム。差が出るのは明白だ。(これは何もワールドチャレンジにかぎらず、J1の試合でも見られる光景である)

バルセロナにはチームとして確固たるプレーのコンセプトがある。だからこそ、選手を大幅に入れ替えても(ワールドチャレンジは選手交代が自由)、ある程度のクオリティは保たれ、チームとしてボールを動かす中で、個の技術やひらめきといったアドリブも効いてくる。

 

バルサ3

 

少々厳しい言い方になってしまうかもしれないが、日本の大半のチームには明確なプレーコンセプトがないので、ピッチに立っている選手の能力に依存することが大きい。そのため何が起きるかというと、能力の高い選手が出ていればチーム力は上がり、出ていないと下がる。そして、一部の能力のある選手が試合に出続けて、サブの選手のプレー機会が少なくなる。(ジュニア年代において、プレー時間はなるべく均等にすべきだと個人的には思う)

プレーコンセプトを学び、チームとしての判断基準のもとに動く、バルサの選手達。「この局面において、良いプレーとはこういうもの」という判断基準の元にトライ&エラーを繰り返すことで、できなかったことができるようになっていく。それは決して、指導者がプレーを押し付けているのではなく、サッカーを上手くプレーするための基準と方法(プレーのコンセプト)を授けているのである。

スペインは9月からシーズンが始まるため、バルサにとってワールドチャレンジは新チーム立ち上げの最初の大会だ。この大会からチームに加わるタレント(今回でいえばアンダルシアのクラブから来た8番など)がいて、コンセプトを習得し、チームを構築する時期である。各選手がほぼ平等に試合に出て、ゴールキーパーやセンターバック、センターフォワードなど、専門的な能力が求められるポジション以外は、様々なポジションでプレーする。そこでの経験がさらなる成長へとつながるのは想像に難くない。

 

バルサ2

 

バルサにとって、ワールドチャレンジで得た経験は、確実に選手として、チームとしての成長につながっていくだろう。それは前述したように、大会に出て試合をこなす中で、上積みがされる育成方針だからだ。翻って日本のクラブはどうだろうか。バルサと試合をした。ワールドチャレンジに出た。それ自体は素晴らしい経験だっただろう。だが、試合をしたこと以外の上積みはあったのだろうか。

5年目を迎えたワールドチャレンジだが、そろそろ「バルサは特別」「彼らだからできる」と仰ぎ見るのではなく、日本のクラブは彼らから何かを盗み、よりよい育成とは何かを考える時期に来ているのではないだろうか。そして、まだまだ日本サッカーの育成には、伸びしろが残されているようにも思う。

 

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