2016.07.20 Wed

Written by EDGE編集部

育成・トレーニング

【少年サッカー移籍問題5】サッカー先進国スペインとイングランドの事例が示す、育成年代の環境整備の重要性

フットボールエッジでは過去4回に渡り、少年サッカーの移籍問題について特集をしてきました。フットボールエッジ以外にも複数の雑誌がこの問題を取り上げていることからも、関心の高さがうかがえます。前回の特集ではドイツの現状をレポートしましたが、今回はスペインとイングランドの例を紹介します。(文・鈴木智之/フットボールエッジ編集長)

少年サッカー移籍問題 第1回の記事はこちら

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まずはスペインの例。Movement Global Football 代表の植松慶太さんより、貴重な情報が寄せられました。

◆どんなレベルの子も、公式戦を十分に楽しめる環境がある

スペインでの育成年代の環境をご紹介させて頂きますと、既にご存知かと思いますが、本当に”自由”です!スペインでは、U19(JUVENIL)、U16(CADETE)、U14(INFANTIL)、U12(ALEVIN)、U10(BENJAMIN)と育成年代は大きく5つのカテゴリーに分けられ、その下にU8 (PRE BENJAMIN)という設定もあります。※U12までが7人制。

各カテゴリーは1~4部(JUVENILは5部)まで設定されており、ピラミッド型の競争世界がU10から存在しています。1部は憧れの舞台で、当然皆、そこでプレーしたいと思う訳ですが、上には上がいる訳で、そう簡単ではありません。もしくは、1部のクラブに入れる実力はあるけど、そこでレギュラーを取りきれないのであれば、2部のクラブで主力としてバリバリプレーするという選択肢もあり得ます。

育成年代はアマチュアなので、移籍は当然自由。シーズンの切れ目は勿論、シーズン中の移籍も頻繁に起こります。移籍を決意する彼らは、”試合にもっと出たい””チームの中心として活躍したい””あのチームのプレースタイルが好き”など、理由は様々です。兎に角、今のクラブで満足なサッカーライフを送れていないのであれば、より良い場所を求めるという当たり前の発想と権利を彼らは手にし、活用しています。

結果的に、より上を目指せる、より戦える選手は、より強いチーム、より上のリーグへ駆け上がり、現状が実力的に厳しいのであれば、レベルやランクを下げる。そうした自然淘汰の結果、健全な競争原理が作用する事となるのです。1部や2部でプレーする実力の無い子でも、3部や4部でなら、同じような実力の選手に囲まれ、ヒーローになれるかもしれない。フットボール大国には、誰でも、どんなレベルの子も、公式戦を十分に楽しめる環境があります。

よく聞く話ですが、街クラブには、1部や2部でやれる子もいれば、3部や4部クラスの子も混在している。そうしたレベルがまちまちの子が混ざっていると、レベルの高い子はチームのレベルに合わせなければならず、成長する足かせになってしまう。やはり、同じレベルの子同士が集まって切磋琢磨する方が、個々のレベルアップには相応しい訳です。

リーグ戦文化の定着を目指し、そこに各クラブが競争原理の中で凌ぎを削り、切磋琢磨し合う。子供達は、自分のレベルにあった環境で、自分のレベルに合った仲間に囲まれて、刺激し合い、成長して行く。その為の自由な移動を当然のものとして認めていく。

そうした健全な競争原理こそが、日本がサッカー大国の仲間入りを目指すのであれば、必須条件だと思います。

 

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続いて、イングランドからの情報です。ロンドンでFootball Samurai Academyというサッカークラブを運営している竹山友陽さんより情報を頂きました。

◆日本サッカーの発展に欠かすことの出来ない、グラスルーツサッカー

私はロンドンにてFootball Samurai Academyというサッカークラブを運営しており、クラブはロンドン西部のハローユースリーグというリーグ戦に登録しております。U7からU-15までチーム登録しております。日本の育成年代にそのまま活かすことはできない話かもしれませんが、海外育成事情の一つとして情報を共有できればと考えメールをお送りしております。

ハローユースリーグはMiddlesexFAの管轄のもと、U-7からU-18のリーグがあり、9月末から5月までの週1回のリーグ戦やカップ戦も行っております。4か月はオフ期間です。

グラスルーツレベルでの運営は非常に組織化されております。ハローユースリーグの登録チームは、650チーム、登録選手は、1万以上を超えます。来シーズンも10チームが新規登録審議中で、協会と代表者が面談を行い、クラブの現状を説明した上で登録が認められます。(スポニチの記事)

大きなクラブとなると、A、B、Cとチームをレベルごとに分けて登録しておりますので、まずはチーム内で移籍があります。複数チームが登録可能なので、試合出場時間が確保できます。

一度チーム登録をすると、AとBチーム間でも協会に移籍を申告する必要があります。また、試合前に選手カードを必ずコーチ間で確認することが義務づけられています。

各学年ごとに1部から8部まで存在するので、毎週自分のレベルにあった相手と対戦することになります。異なるクラブでの移籍には、両チーム間の監督のサインと選手サインと選手カードを協会に届けると、2週間くらい後にはプレー可能です。

1部で活躍する選手たちには、プロクラブのスカウトが見にきているので、アカデミーへの道が開けますが、それ以外の選手たちにとっては、日曜日の朝に1試合フットボールを楽しむという文化が成り立っています。

練習時間は、週に1回。土曜日。日曜日の朝に試合を1回です。新シーズンになると、登録は1からとなるので、移籍の手続きはなしで、次のクラブでプレーすることも可能です。

参考になるかどうかわかりませんが、日本サッカーが発展するために欠かすことができないのが、グラスルーツサッカーの浸透だと思います。

 

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☆   ☆   ☆

前回紹介したドイツ、そしてスペイン、イングランドの例を見ても、組織(統括団体)が移籍期間やルールを明確化しています。一方、日本の場合は前回の記事でも記したとおり、日本サッカー協会に加盟している都道府県のサッカー協会においては、日本サッカー協会が定める移籍のガイドラインに則った行動が求められますが、都道府県協会とつながりのない市区町村の連盟に関しては、ローカルルールが生まれやすい現状があります。まずはそこを是正することが移籍の明確化につながり、トラブルを避けるための方法になると言えるでしょう。

競技人口を増やすことが、国としてのサッカーの強化に繋がることは疑いようのない事実です。その入口に立つジュニア年代の選手たちが、大人の利己的な考えやエゴにより、サッカーへの道が閉ざされることがないよう、一人ひとりが考えて、行動に移していくべき問題なのかもしれません。フットボールエッジでは、この問題について継続して取材を続けていく予定です。

2017年3月13日追記。この問題について、日本サッカー協会より通達が出され、解決に向けて大きな一歩が踏み出されました。

【少年サッカー移籍問題6】移籍問題解決に向けて、日本サッカー協会から通達が出される!

 

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