2016.06.13 Mon

Written by EDGE編集部

育成・トレーニング

【少年サッカー移籍問題3】日本中から届いた保護者、指導者の叫び。子どもたちの環境を良くするにはどうすればいい?

この特集を制作するきっかけとなった、サッカーコンサルタントの幸野健一さんとともに全てのメールを読み、今後どうするのがクラブ、選手、双方にとって良いことなのかを考えていきたいと思います。(聞き手:鈴木智之/フットボールエッジ編集長)

鈴木:編集部に寄せられたメールを読んで、どう感じられましたか。

幸野:移籍問題は日本中で起きていると感じました。私のところにも、東北から沖縄まで、各地から情報が寄せられています。なにより「移籍問題で子どもがサッカーを辞めてしまった」という声が残念です。

鈴木:日本サッカー協会はプレイヤーズファーストを掲げ、サッカーファミリーの増加を目標にしています。しかし、移籍問題で子どもがサッカーを辞めてしまうのは真逆というか、理念にも反することだと思います。

幸野:4種(小学生年代)の移籍問題については、都道府県の協会やクラブが作るローカルルールが生まれやすい傾向にあります。前回の記事では横浜市某区の例をあげましたが、関係者に話を聞くと、その地域では以前、ある新規クラブが周囲のクラブから選手を勧誘して根こそぎ奪い、グラウンドも確保してしまった経緯がありました。そこでクラブを保護するために、区のサッカー協会がルールを決めたことがわかりました。もちろん、クラブを守ることも大切ですが、クラブと選手のどちらかを優先するならば、まずは選手がクラブを自由に選び、移籍できる権利を認めてから、クラブの保護をすべきだと思います。いまはクラブ側の立場が強く、選手側に不利益を被る事例がたくさん寄せられています。

鈴木:移籍問題の取材を続けていて感じたのが「プレイヤーズファースト」ではなく「クラブファースト」の部分が多いということです。地域の少年サッカー連盟にしても、組織の構造上、ルールを作るのはクラブ側の人たちです。関係者に取材をしていてわかったのは「クラブ間で揉めないように」「地域内で摩擦が生まれないように」という配慮がもの凄く働いている結果、子ども達にとって不利益なルールが生まれている現状があるということ。もちろん、そのようなルールが定められた裏側には、現場で起きた様々な問題があったからということは十分に理解できるのですが。

幸野:そのとおりだと思います。

鈴木:たとえば、ある地域の少年団の選手たちが、新しくできたクラブチームに移籍した結果、少年団の人数が大幅に減ってしまい、活動に支障をきたすようになってしまったと。そのような状況を作らないために、移籍に制限をかけようという流れも理解できます。一方で、あるクラブに子どもが行きたい、親も行かせたい、クラブ側も来て欲しいという「両思い」の状態であるにも関わらず、移籍ができない状況も生まれてしまっているわけです。果たして、そのルールは本当に選手のため、プレイヤーズファーストなのかというところは議論の余地がありますし、改善の余地もあると思います。

幸野:クラブ側の「選手に移籍してほしくない」という気持ちもわかります。せっかく長い年月をかけて指導したにも関わらず、5、6年生になってこれからというときに「ほかのクラブに行きます」と言われたら、心情的に首を縦に振りたくないという気持ちもあるでしょう。クラブチームの場合、選手の数が減れば経営にも関わるでしょうから。私はアーセナルサッカースクール市川の代表として、クラブチームの経営もしています。本来、クラブ側の人間なんです。その立場の私ですが、それでもやはり「プレイヤーズファースト」で、選手の意志が第一に考えられるべきだと思っています。

 

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所属するクラブでうまくいかなかったら、すぐに移籍をしたいと考える保護者や選手も出るかもしれません。でも、指導者やチームメイトと合わなかったり、チームの指導レベルと選手のレベルが離れているのであれば、その選手に合ったチームにすみやかに移籍できるようにすべきだと思います。せっかくサッカーを始めた子が、プレーとは関係ない部分で辞めてしまうのは、あまりにももったいないと思うんです。

いま4種ではリーグ戦化が進んでいますが、私の考えとしては、リーグ戦化は選手の移籍とセットになって、はじめて意味があるものだと思っています。リーグ戦化することで1部、2部、3部とリーグに所属するクラブにヒエラルキーが生まれるものですし、選手のレベルに合ったチームでプレーするためには、スムーズに移籍できるルールは欠かせません。現に、育成年代で何年も前からリーグ戦が主体となっているヨーロッパでは、育成年代選手の移籍に関しては、最低限のルールのもと、自由に行き来しています。

鈴木:移籍について特集をしたことで、多くの意見が寄せられ、中にはスペインやドイツ、イングランドの事例など、有益な情報も寄せられました。詳細は今後の記事で紹介していきますが、非常に合理的でクラブ、選手双方にあつれきが生まれにくい制度になっています。海外のやり方がすべて正しいというつもりはありませんが、良い所は取り入れてもいいのではと思います。

幸野:サッカーに関しては、ヨーロッパには日本よりも長い歴史があるわけで、海外の事例を出すと「日本と海外は違う」と言う方もいますが、海外には長い時間をかけて、最適化されたシステムがあります。当然、そのシステムに行きつく中で、いま我々が直面している問題も経ていると思います。今回の移籍問題については、問題提起をして終わりではなく、実際により良い制度を作るためにはどうすればいいかというところまで、話を持っていくことができればと思います。(第4回に続く)

 

フットボールエッジでは、この問題を継続的に取材し、様々な意見を発信していきたいと思います。

同じような目に遭ったという方や、ご意見、ご感想がある方。また、クラブ側から選手の移籍について「うちのクラブはこう考えています」などのご意見がありましたら、下記メールアドレスにお寄せください。(とくにクラブ・指導者側のご意見を募集しています)

footballedge2015(アットマーク)gmail.com
件名:移籍問題

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