2016.06.06 Mon

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

【少年サッカー移籍問題2】子どもが「移籍したい」と言うのは、そのチームに魅力がないということ【久保田コラム】

「特集・少年サッカー移籍問題」を掲載した所、編集部には多数の反響が寄せられました。今後、記事内で紹介していく予定です。この問題について、連載コラムでおなじみ久保田さんは、どのような考えを持っているのでしょうか? 現場のまっただ中にいる、当事者の視点からのコラムをお届けします。(文・久保田大介/SUERTE juniors 横浜)

フットボールエッジで継続的に取り上げることになった「少年サッカーでは、選手の移籍がスムーズにできない」という問題について。僭越ながら、自分の考えを書いてみたいと思います。(特集1回目の記事はこちら)

まず、うちのクラブ「SUERTE juniors 横浜」は、JFA(日本サッカー協会)およびKFA(神奈川県サッカー協会)には登録しているものの、横浜市やホーム所在地の区には登録していません。そのため、市大会や区大会といった、大人達が大好きな「公式戦」に出場する機会がほとんどないため、あまり「移籍うんぬん」について揉めたことがありません。

(ちなみに「市や区に登録させてもらえない問題」については、改めて問題提起したいと思っています)

なぜ、公式戦に出ないことが、移籍で揉めないことに繋がるのかというと、大人は「公式戦」という響きが大好きで、そこに重きを置いている人が多いからです。

公式戦の結果のために、選手を取られたくない、戦力ダウンを避けたいと考える人が多く、それが「選手を自由に移籍させたくない」という考えに繋がるのだと思います。

そんな中、うちのクラブは公式戦とは無縁なので、あまり関係がないわけです。

うちのクラブには、地域の少年団にも所属している子が何人もいますが、その子達にも「週末は、そっちのチームの試合を優先していいよ」と言ってあります。うちで練習して巧くなって、自身の少年団で活躍してくれるだけで、こちらは充分です。

「移籍させたくない」人達が、公式戦うんぬん以外の理由で移籍を拒む理由といえば、単純に選手数が減るのは困るとか、チーム間や指導者同士の軋轢とか、大人側のつまらないメンツの問題がほとんどでしょう。

つまりこの問題、少年サッカーに関わる大人(指導者、親)の在り方や意識を変えるだけで、全て解決ですよ。

しかし、なかなかそうはいかない現状があるわけです。

簡単に言えば、大人側の未成熟さと、閉鎖的体質。それに尽きます。

子どもがそのチームを辞めたい、移籍したいということは、つまりそのチームに魅力がないということ。指導者自身の指導力不足、魅力不足。それを棚に上げて、自身の事情やメンツのために子どもを縛りつけるなんて、もってのほかでしょう。

もちろん、友人関係や親同士の揉め事に巻き込まれて、他チームに移りたい場合だってあるでしょう。それならなおさら、移籍はスムーズにさせてあげないといけない。

それなのに、簡単に移籍させない。移籍させることを拒む。移籍しづらいシステムを作って選手を囲う。囲うというより、縛りつけているチームや指導者が多い。

 

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この問題について、以下のような意見を述べている人もいました。

「(移籍自由は)勝手すぎる。仕事と一緒。自分が辞めたいからって、辞めたい時に会社を勝手に辞められますか? 他の選手達やチーム事情を考えて、指導者は移籍承認をするものだ」と。

うーん、子どものスポーツは仕事と一緒ではないでしょう。遊びであり、楽しみのはず。お金をもらってやるものではない(むしろ払ってる)し、残された他の選手達のケアやチーム事情を考えるのは、それこそ指導者の仕事であって、それを盾に移籍承認をしない、移籍させない、つまりそれを子どもに押しつけるというのは、本末転倒でしょう。

「チームの一員であることを自覚しなければいけない」と述べていましたが、そういった責任感うんぬんといった道徳的なことを子ども達に指導したいのなら、ピッチ上でのプレーを通じて日常的に伝えていけばいいことです。移籍したいという子どもを縛りつけて、それを押しつけようとするのは、方法がずれていると思うのですが。

もちろん、親のエゴで子どもを言いくるめて、他チームへ移籍させたがるケースも多いでしょう。トレセンで関わった指導者が、良い選手を自身のチームへ引き抜いてしまうというケースも多々あると聞きます。

ただ、そういうケースがあるとしても、移籍は自由にスムーズに認められるべき。自分は、そういうスタンスでいます。あまりにも露骨な引き抜きを繰り返す指導者やチームは、ほっといても、そのうち勝手に信頼を失っていくでしょうし。

もちろん、うちは移籍OKです。引き抜いてもらっても、一向に構いません。他のチームからうちに移籍してきた子は、過去も現在も、何人もいます。

「引き抜きだ!」と言いがかりをつけられたり、陰口を言われたこともありましたが、全く気にしていません。実際、僕が声をかけたわけでもないし、子ども達が、うちのクラブを見つけて選んでくれただけです。

さて、冒頭で「選手の移籍がスムーズにできない」とソフトな表現で書きましたが、現状はもっと酷いものがあります。

例えば…

・兄が他チームへ移籍したら、その妹まで、強制退部を言い渡された(もはや人権侵害)

・「1年間は移籍できない」「移籍しても、1年間は公式戦に出場できない」というサッカー協会の決まりがあるからと、嘘の脅しをかける(もはや詐欺)

・退部届けに「移籍希望理由」を書かされ、承認を得ないと移籍承認のサインをしてもらえない(このチームが嫌だから、って書けるわけがない。もはやパワハラ)

その他、全国各地でいろんな例があるのではないでしょうか。それらの実態も含め、これ以上はフットボールエッジの記事に引き継いでもらうとして…。

今回、自分が言いたいことは次のことに尽きます。

こういうことをする人達が
こんな懐の小さい、器の小さい人達が
こんなクローズな人達が

夢を持った子ども達にサッカーを教える資格があるんですか?

サッカーの自由さ、本当の面白さ、素晴らしさを、ボールを通して伝えられるんですか?

ということです。(了)

【プロフィール】

久保田大介。ジュニア年代からジュニアユース、高校の女子サッカー部を指導するプロコーチ。指導者の学びの場”Borderless” football community主宰。

<SUERTE juniors横浜ブログ(ジュニア)>

<SUERTE las niñas 横浜ブログ(U-15女子)>

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