2016.05.17 Tue

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

ドイツで活躍する山田大記選手(元ジュビロ磐田)が取り組む、足が速くなる方法とは?(前編)

かつてジュビロ磐田で背番号10を背負い、エースとして活躍した山田大記選手。2015-16シーズンはドイツのブンデスリーガ2部、カールスルーエでプレーしている。山田選手がドイツに渡って感じたのが「外国人のスピード、当たりの強さ」だ。そこで、欧州で戦い抜くために、スピードアップと身体の使い方のトレーニングに着手した。山田選手が指導を仰ぐのが、大学や実業団の陸上部監督であり、ラグビー日本代表のスプリントコーチも務める里大輔氏。はたして、山田選手はどのようなトレーニングで、屈強な外国人選手と渡り合えるようになったのか。山田選手と里大輔コーチのインタビュー前編をお届けします。

――里コーチにうかがいます。山田選手とトレーニングをするきっかけを教えて下さい。

里:きっかけは、ドイツに住んでいる共通の知人の紹介です。初めてトレーニングしたのは2015年の6月で、その時は日本で3日間トレーニングをしました。

――山田選手の動きの印象は、どのようなものでしたか?

里:サッカー選手としては十分な動きのクオリティを持ってはいるのですが、体のポテンシャルを活かしきれていない印象を受けました。山田選手が思い描くイメージと実際の動きにズレが生じていて、特に加速をするところでそれを感じました。

――具体的に、どのあたりに感じたのでしょうか?

里:スピードアップするためには「加速」が必要なのですが、加速するときに前傾しますよね。イメージでは前傾しているつもりが、首が身体の前に出たり、体が起き上がっていたり、足をつく場所が違っていたり。速く走るためには基本の姿勢が大切で、特に、加速を開始するセットポジションにおいては、頭の位置と足の位置(足の上の延長線上に頭の位置がある)が同じだと、スピードが出ないんですね。頭が、足の位置から少し前に出たときに足部への加重が始まって、初動でしっかりと踏み込むことができ、スピードに乗ることができます。

 

一般的な立ち姿。かかとの上に頭があり、加速しづらい

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スピードアップ(加速)に適した、軽度の前傾姿勢

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――その状態を作るために、トレーニングをしていると。

里:はい。まずは、瞬間的に重心を移動させる方法を身に付けることから始まり、立っている状態で、いつでも加速できるようになるための意識付けをすることに取り組みました。専門的な話になりますが、走る動作は「股関節の曲げ伸ばし」によって行われています。股関節を速く曲げ伸ばしすることができれば、結果として速く走ることができます。そのために重心の位置を少し前方にし、足の指先に体重をかけます。指先だけに加重するのではなく、足裏の土踏まずから指先まで全体です。そうすると、かかとの上にあった頭の位置が、拇指球(足裏の親指の付け根)の上に来る。つまり、軽度の前傾姿勢になりますよね。

 

かかとの上に頭があると、スピードに乗りにくい

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前傾姿勢を作り、拇指球の上に頭が来るようにする

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――(実際にやってみて)たしかにそうなります。

里:その状態で、みぞおちの部分を上方に引き上げて、腸腰筋を使いやすくします。その姿勢を「ゼロポジション」と言います。サッカーの試合中、常にその状態でいると、すぐに動き出すことができるので加速しやすくなり、スピードが上がります。また、ゼロポジションの状態でいると、相手に当たられた時に倒れにくくなります。たとえば、二人で向い合って立ち、押し合いをするとしますよね。これは、ゼロポジションをキープできれば勝ちやすく、反対にゼロポジションから外れて、後方に体重がかかると負けてしまいます。つまりサッカーの試合中、相手とボディコンタクトするときも、ゼロポジションに乗っていれば、ある程度は強く当たることができるんです。

――なるほど。筋力を向上させるだけでなく、体の使い方も大切なんですね。

里:そうなんです。相手とぶつかるときに、ゼロポジションから離れると負けてしまいます。実はボールを蹴る動作も同じで、軸足を踏み込んで、ゼロポジションに入った瞬間に蹴り足のスイングが始まるかどうかが、強いシュートを蹴るときのポイントなんです。ヨーロッパの選手に比べて、日本の選手は強くて低いシュートを蹴るのが苦手ですよね。それは多くの場合、かかとに体重が乗っているからなんです。かかとに体重がかかると、上体が開くのでゴールの上へボールが飛んでいきやすくなります。一方で、つま先に加重して、身体が地面に対して垂直に立つと、シュートアングルが狭くなり、結果としてボールの弾道が低くなります。

(ここで山田選手登場)

――山田選手にうかがいます。今回は何をテーマに里コーチとトレーニングをしたのでしょうか。

山田:おおまかに言うと、まずはコンディショニング。それとシーズン中に足りない動き、プラスした方が良い動きをトレーニングしました。初めて(里)大輔さんと一緒にトレーニングしたのが半年前で、その後ドイツに戻ってからも、教えてもらったポイントを意識しながら自主トレをしていました。そのせいかコンディショニングも含めて、かなり良い感じです。トレーニングを始めた当初は知らなかったことばかりだったので、インプットするばかりだったのですが、ドイツに戻ってからは自分で意識しながら取り組めた部分もあります。

里:山田選手は理解力が高いので、言ったことをすぐ実行できます。非常に賢い選手だと思います。

 

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山田:大輔さんは自分がドイツでやってみて疑問に思っていたことや、ここの動きは違うんじゃないかと感じていたところを、的確に指導してくれるので、トレーニングを重ねるごとに良くなっていっているのがわかります。大輔さんと出会ってからの半年間は、身体が軽いですし、ボールが来たときのリアクションもフィットしています。

――海外でプレーする場合、フィジカルはベースの部分ですよね。そこをヨーロッパの選手と対等に渡り合えるところに持っていかないと、技術、戦術の勝負に持ち込めない。

山田:そうなんです。フィジカルコンディションが悪い状態でプレーしても、うまくいきません。いまはかなり上がって来ているので、これで点が取れるようになってきたら理想の状態に近づくことができます。

里:山田選手と半年間トレーニングをしてきた印象でいうと、まだ持っている力の6、7割ぐらいしか出せてないのではないかと思います。そう考えると、選手としてのピークはまだ先にありそう。山田選手はしっかりと自己分析ができる選手ですし、考えて取り組むので、吸収は早いですよ。

 

山田大記2

 

山田:もともと考えることが好きで、体の事に対する興味はあったんですよね。大輔さんとトレーニングをしたことで、こうだから、こうなるという理論の部分がクリアになったので、自分の動きに対して、考える内容の質が上がってきたと感じています。もともと、素早く動けるタイプではなかったので、それ以外の部分で勝負しなければいけないと考えていたのですが、素早さやスピードといった動きのベースも上げて、さらに他の部分も伸ばすことができると感じられたので、サッカー選手としてまだまだ伸びしろがあると思っています。

里:サッカーのプレーで言うと、走る動作とボールを蹴る動作は通ずる部分があるんですね。先ほどキックの話をしましたけど、海外の選手は軸足を踏み込むと同時に足のスイングが始まるので、キックモーションが小さくても強いボールを蹴ることができるんです。

山田:それは感じます。1、2のリズムではなく、1のタイミングでシュートを打てる。

里:実はキックと走りの動作は同じで、山田選手のトレーニングにスキップ(片足ピックアップ)を取り入れているのにも、そこに理由があります。地面に片足が接地するのと、反対側の足を振る動きをほぼ同時に行い、片足を踏み切るのと同時に、もう片方の足が同時に出てくるようにします。欧州や南米、アフリカの選手はその能力がすごく高いんです。だから速く走ることができるし、強くて低いボールを蹴ることもできる。ただ、日本人でも意図的にやれば、できるようになります。山田選手は身体の構造を説明して、理解した上でトレーニングに向き合うタイプなので、習得は早いと思います。

山田:僕は納得できないとやれないんですよね。こうやったほうがいいよと言われても、性格的に、なぜという理由がわからないと、やろうと思わない。大輔さんはトレーニング中もそうですし、必ず理論を説明してくれるので、自分としてはやりやすいです。(後編に続く)

 

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山田選手のトレーニングの詳細を知りたい方は、里コーチのHPをチェック!

 

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<インタビュー後編はこちら>

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