2016.05.09 Mon

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

教員から受けたありえない仕打ち。部活動を支える“外部コーチ”の、知られざる現場のリアルとは? 【久保田コラム】

最近「学校における部活動問題」が、多くのメディアで取り上げられるようになってきました。教員が部活をやりたくないのに無理やり顧問をやらされ、休日は潰され、授業に支障が出る。「無理やり部活の顧問をやらされるのは憲法違反だ」なんて声もありましたね。“ブラック部活”という言葉まで出て、教員の人達が署名を集めたというニュースもありました。しかし、今のところ教員側からの視点や訴えしか表に出ていないので、僕が“外部コーチ”という、外から部活に関わった立場から、現場のリアルを発信したいと思います。(文・久保田大介/SUERTE juniors 横浜)

僕は2016年3月に、約11年半、務めてきた某都立高校女子サッカー部のコーチを辞めました。いや、正確に言うと辞めさせられました。

なぜ僕が、この学校を辞めさせられるまでに至ったのか。そしてこれまで、とくにこの一年の間に何があったのか。顧問の方々が何をし、その度に僕が何を言い、そして何をされたのか――。

僕はこの都立高校以外にも、いくつかの学校で外部コーチをしてきました。そこで体験した、外部コーチの扱われ方、学校という閉ざされた組織の弊害。そして外の人間を受け入れようとせずに外部コーチを下に見る、たくさんの人達と遭遇してきました。

今回のコラムでは、普段メディアに出にくいことも洗いざらい書きます。自分以外にも同じような境遇で、同じような体験をした人は何人もいます。そのため、ある程度は「外部コーチからの訴え」として、受け止めて頂いて良いのではないかと思います。

その上で、部活動をどう活性化させていけばいいのか? という問題提起のキッカケになれば、嬉しいです。

日本は、世界で一番スポーツ施設が装備されている国だと思います。小学校から大学まで、ほぼ全ての学校にグラウンドがあり、サッカーゴールがあり、バスケットゴールがあり、バレーボールやバドミントンの設備もあり、テニスコートもあり、アリーナ(体育館)だってある。高校以上になれば、柔道などができる格技室もあります。

せっかく良い設備があるのだから、有効に使わないのはもったいない。授業が終わって、外が明るいうちに好きなスポーツや文化活動ができて、19時前には家に帰ることができる。ゆっくり夕食を食べることができて、勉強時間も睡眠時間も余裕を持ってとれる。部活、いいことだらけです。

しかし、スポーツや音楽、芸術のような「表現」や「文化」を、教育の一環として学校の先生が全てやろうとすることが、そもそもの間違いだと思うんです。専門外ならなおさら。

昨今問題になっているように、部活をやりたい先生もいれば、やりたくない先生もいます。そして「やりたい先生」だったとしても、申し訳ないですが良い先生とそうではない先生もいます。もし「良い先生」だったとしても、公立校の場合、異動でいなくなってしまうことが頻繁にあります。

つまり学校の部活には「良し悪し」や「当たり外れ」があり、その当たり外れで生徒の3年間が左右されてしまうのです。

部活なんてやりたくない先生が無理やり顧問をやらされ、その結果、教員の仕事や負担が増え、授業に悪影響を及ぼすのは、教員も生徒もお互いが不幸です。実際、そのような現場をたくさん見てきました。

その不幸をなくすために、どうすればいいのでしょうか?

答えは簡単。

外部の専門家、つまり外部コーチに任せればいいんです。

学校には『総合型スポーツクラブ』に必要な設備が揃っています。スポーツの専門家である外部コーチを登用して設備を有効活用し、地域と交流をしながら、部活をもっともっと活性化させていくべきだと思います。

最近は「外部コーチを招いて、教員の負担を減らすべき」と言われるようになってきました。全くもってその通り。ぜひそうしてほしいと思います。

しかし、事はそんなに単純ではありません。「外部コーチを積極的に使おう!」という方には、ぜひ外部コーチの立場や現状を知ってほしいのです。

僕はこれまで、いくつかの学校で外部コーチを務めてきました。良い先生にもたくさん出会ってきました。立場の弱い外部コーチの自分を、身を呈して守ってくれた先生もいました。今でも自分のことを心配して、ことあるごとに連絡をくれる方もいます。

ある中学校でコーチをしていた時は、サッカー部顧問の先生だけでなく、他の先生達もことあるごとに飲みに誘ってくれたり、職員旅行にまで連れて行ってくれました。当時の野球部の先生からは「お互いに得るものがあるだろうから、野球部とサッカー部で合同練習してくれないか」とお願いされ、オーガナイズを僕に任せてくれたり。その先生とは、今でも交流が続いています。

そんな理解のある先生達がいてくれたからこそ、僕は今まで外部コーチを続けることができたのだと思います。

しかし、残念ながら「そうではない先生」にもたくさん遭いました。会うではなく「遭う」という字を使ったことを、ぜひ察してほしいのですが「そうではない先生」に当たってしまうと、不当な扱いを受けなければならないことが、多々ありました。

詳しくは後述しますが、不当な扱いを受けながらも、僕らはコーチを続けます。なぜなら、生徒達にもっとうまくなってほしいから。生徒達のことが好きだから。しかしそんなコーチの熱意と好意(手弁当、行けば行くほど赤字)に乗じて、とことん利用する学校や教員がいるのも事実です。外部コーチを都合の良い駒のように扱い、そして最後はあっさり切る…。

だいたい「外部コーチ」という呼び方が、すでに壁を作られていますよね。なんたって「外部」ですから。僕らにしてみれば教員のほうが、よっぽど生徒達の心の「外部」にいるじゃないか。本気で向き合おうとしていないじゃないか…そう感じることが、これまで多々ありました。

では具体的に、これまでどんな事があったのか。いくつか例をあげてみます。

これはすべて実体験です。

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「部活は教育の一環でやるものだから、試合なんて無理にやらなくていいんですよ」

 

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