東京国際ユースで優勝したボカの監督が、指導をする上でもっとも大切にしていることとは?

2016年5月4日、東京国際ユース(U-14)の決勝戦が行われ、ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)がカイロ(エジプト)を1対0で下し、見事優勝を果たした。大会を通じて、ボカの選手達が見せた球際のボディコンタクトの強さ、勝利への執着心は頭抜けていた。試合後、ボカのルケス監督が語った、指導をする上で大切なこととは?
ボカのルケス監督が指導をする上で、もっとも重要だと思っていること。
それは「すべての試合を、決勝戦だと思って戦うこと」だという。
なぜなら「ボカのトップチームに昇格したときには、すべての試合に勝たなくてはいけないから」(ルケス監督)である。
14歳である彼らは、ボカのトップチームでデビューすることを夢見て、日々、苛烈な競争を戦っている。
目の前の相手に勝ち、トップチーム昇格のためのライバル(チームメイト)にも勝ち続けることで、ひとつひとつ階段を登っていく。その先に、ボンボネーラでのデビューが待っている。
そして「目の前の相手に勝ちたい!」という強烈な想いがあるからこそ、試合中、無数にある勝負の場面――それは球際であったり、一本のシュートであったり、相手との競り合いといった状況に全力を尽くす。
ボカの監督は「勝つことによって、学ぶことがある」という。
それは、ボカというチームの環境においては、絶対的な真実なのであろう。

優勝の喜びを、全身で表現するボカの選手達
東京国際ユースの(U-14)の試合を見ると、優勝したボカも、準優勝したカイロも、球際での競り合いは一歩も引かず、ファイティングスピリットを前面に出し、ときには相手と小競り合いする姿からは、勝利への強い欲求が伝わってきた。
もちろん、その背景には、国民性や文化の違い、選手達の置かれている環境や立場が違うので、日本の子ども達と一概には比較できないが、サッカーという「戦いの要素」が含まれた競技をするに当たって、必要なことなのは間違いないだろう。
極端ない言い方をすると、日本国内でサッカーが完結するのであれば、とくに戦う姿勢や気持ちを押し出さなくても、似たようなテンションのチーム同士が戦うので、違いとして露わになることは少ない。
しかし、こと海外のクラブ、とくに南米をはじめとする、戦う姿勢が標準装備されている相手と戦うときには、日本の選手達との「サッカーに対する捉え方、表現方法の違い」が浮き彫りになる。
異文化に触れることで、普段アタリマエのこととして目に映るものが、アタリマエではないように見える。それが、異文化交流のメリットである。
そこで「あいつらは特別だから」と言って終わるのか、それとも「自分たちに足りない部分なのだから、向上させよう」と思うのか――。
一般的な日本の選手たちと、ボカやカイロの選手たちが考える「サッカー」というスポーツに対する文脈や捉え方の違いが見えた面からも、非常に有意義な国際大会だった。(文・鈴木智之/フットボールエッジ編集長)