2016.03.15 Tue

Written by EDGE編集部

アジア

【第42節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡「プレミアリーグ化における、資金面での弊害」

近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポ レートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ ×ビジネスの観点から綴るエッセイ(アーカイブ)をお届けする。(文・写真 池田宣雄)

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<初出:2015年8月第4号 ぽけっとページウィークリー>

(編注:内容は全て原稿執筆時点2015年8月のもの)

香港リーグは、2014/15シーズンから「香港プレミアリーグ」に名称を改めて、従来からのリーグ参戦基準を厳格化している。

初年度は、リーグ参戦基準をクリアした9チームによるリーグ戦が行なわれ、名門傑志(キッチー)が優勝。最下位の和富大埔(タイポー)が「香港1部リーグ(実質2部)」に降格した。

「香港プレミアリーグ」以前は、実質的に2部相当となった「香港1部リーグ」がトップカテゴリーであったが、アジア最古のプロサッカーリーグと長年謳いながらも、実際にはプロとアマチュアの選手が混在していて、さらにはプロ指導者のライセンスを持たない監督が指揮を執るようなチームも存在していた。

アジアサッカー連盟では、加盟各国のトップカテゴリーについては完全プロ化を推奨しており、完全プロ化の有無を基に、明確な国別リーグランクを策定している。完全プロ化を果たしリーグを活性させる事でランキングが上昇し、より高いレベルの連盟主催大会への出場権が与えられる。という図式だ。

香港サッカー協会としても、アジアレベルでも十分に戦える名門チームを抱えながらも、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)への出場権が与えられない状況からの脱却を図るべく、完全プロ化に向けての準備を進めていた。ただ実際にはアマチュア色の排除を行なった、とも言えるのだが。

 

◆プレミアリーグ9チームでの船出

従来からのオーナー企業内の付属チームや、法人化していない団体組織のチームには、早期の独立法人化を促し、またアマチュア選手や外国籍選手のみで参戦する特例チームなどに、トップカテゴリーへの参戦資格を永久剥奪するなど、ここ数年に渡り、香港サッカー協会はアマチュア色の排除や、特例参戦チームの差別化を進めていた。

比較的潤沢な参戦資金を投入できるチームは、香港サッカー協会の推し進める方針を歓迎する一方で、参戦資金に乏しく、アマチュアの部分を残したままのチームはこれに猛反対。結果的に「香港プレミアリーグ」の初年度は、当初見込んでいた12チームの参戦枠を埋める事ができず、僅か9チームのみでの船出となってしまった。

「香港1部リーグ」時代の参戦予算は、リーグの中位から下位のチームは300万から500万香港ドルだったと認識している。それが「香港プレミアリーグ」に移行した事で、リーグ残留を果たす為に必要とされる資金が、600万から900万香港ドル規模に跳ね上がった模様だ。

独立法人化、ライセンスを所持するプロ指導者の雇用、そして登録選手全員がプロ契約となった事で、常に1,000万から3,000万香港ドルを投入できるチームを除き、低予算のチームは修羅場を迎えている。

実質2部相当となった「香港1部リーグ」を戦い、トップカテゴリーへの昇格を目指すチームも、現実問題として参戦する予算を組めない状況であれば、昇格条件を満たしたとしても辞退せざるを得ない状況を迎えている。

2015年9月に開幕した2015/16シーズンの「香港プレミアリーグ」も、当初は「香港1部リーグ」の上位2チームが昇格して、合計10チームによるリーグ戦の開催を予定していたが、多くの問題が発生してチーム数を増やす事が侭ならなかったのだ。

 

◆揺れる、香港プレミアリーグ

開幕まであと1ヶ月に迫った8月中旬の段階でも、まだ正式な参戦チーム数が確定していない。確定していない以上、リーグ全体の開催日程も決められず、試合会場も押さえられず、また多くの選手たちの契約も成されていない状況となっている。

今夏、香港のサッカーマニアを騒がせた事実をまとめてみよう。

まず「香港プレミアリーグ」を5位で終えたYFCMDが経営撤退を表明。次に「香港1部リーグ」で優勝して昇格の資格を得た駿其天旭が、資金不足を理由に昇格辞退を表明。その直後に昇格を辞退した駿其天旭のスポンサーだった駿其が参戦に名乗りを挙げ、経営撤退したYFCMDのリーグ参戦権を使って、新チーム夢想駿其(ドリーム)を発足させ参戦表明。

これらの状況を危惧した香港サッカー協会が、「香港プレミアリーグ」を最下位で終え降格する和富大埔の特認残留を示唆したが、資金源を既に失っている事を理由に残留要請を辞退。最後に「香港プレミアリーグ」を8位で終え残留した黄大仙(ウォンタイシン)が、資金の目処が立たない事で、登録申請期限を過ぎても一向に進退を表明せず。

その黄大仙が参戦辞退の方向に向いたところで、ようやく資金提供者が名乗りを挙げ事態が急転。しかしその資金提供者の立場がリーグへの参戦規則に抵触していて、リーグ開幕まで1ヶ月に迫った段階でも参戦承認されていない。という事があって、結局8チームになるのか9チームになるのか確定していない。(筆者注:その後、黄大仙のリーグ参戦は承認されて、昨シーズンに引き続き9チームによるリーグ戦が行なわれている。)

このコラムをみなさんが目にする頃にはすべてが確定しているとは思うが、「香港プレミアリーグ」はちっともプレミア感を醸し出してはいない、という事をお伝えしておく。アジアサッカー連盟のご機嫌を伺う事に執着するのも良いが、国内のトップリーグの安定運営の為にも、香港サッカー協会にはもっとしっかりと仕事をしてほしいものだ。

<初出>2015年8月第4号 ぽけっとページウィークリー

<プロフィール>
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池田宣雄(いけだ・のぶお)
AFCB香港紫荊會(www.afcb.biz)代表。大学卒業後、物流大手営業職等を経て、32歳の時に香港で起業。コーポレートコンサルタントのかたわら、フットボールコーディネーターとして香港で活動している。香港サッカー協会会員。1970年生まれの45歳。

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