2016.02.08 Mon

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

オランダリーグでコーチを務める藤田俊哉が語る“指導者としてのビジョン”と、スポーツデータIT化の現在

指導者の海外組として、欧州で研鑽を積んでいる人物がいる。かつて日本代表として活躍し、2001年にはJリーグMVPに選ばれた、藤田俊哉氏だ。2012年の現役引退後、オランダに渡り、VVVフェンロのコーチとして、欧州最先端のフットボールに触れている。昨年、藤田氏はスポーツITカンパニーのCLIMB Factory株式会社(東京都新宿区・代表取締役 馬渕浩幸)と契約を結び、同社のアドバイザーに就任した。スポーツとITを融合させ、サッカーやフットサル、プロ野球など様々なスポーツのITを担うCLIMB Factoryと、欧州を拠点に活動する藤田氏がどのような取り組みをしていくのか。藤田氏のビジョンと、オランダのクラブが実施するスポーツのIT化の現状を聞いた。(文・鈴木智之/フットボールエッジ編集長)

――指導者としての一歩目が海外。それもオランダということで、多くの元Jリーガーや指導者の方とは違うキャリアを歩んでいますが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

藤田:現役時代、最初にプロになったときの監督がオランダ人のオフト(編注:1992年~1993年に日本代表監督も務めた)で、2003-04シーズンはオランダリーグのFCユトレヒトでもプレーしました。もともとオランダとは縁があったように感じています。2006、2007年に名古屋グランパスにいたときの監督も、オランダ人のセフ・フェルホーセンでした。彼とVVVフェンロの会長は仲が良く、そのつながりでフェンロのコーチになるチャンスがありました。自分にとってオランダが身近だったのと、現役時代にオランダ人の指導者からたくさんの刺激を受けたので、チャンスがあるなら行ってみたいと。それで2013年の終わりに、オランダに渡りました。

――最初から、トップチームのコーチとして仕事ができたのですか?

藤田:フェンロに入った最初の6ヶ月間は「こいつはどれだけできるのだろう?」と、クラブの人たちに見られていたようですが、6ヶ月が経って「大丈夫だ!なかなか良いぞ!」ということで、継続して仕事ができています。最初はオランダ語がわからなかったので、オランダ語で聞いて英語で返していました。いまは2年以上、毎日オランダ語が飛び交う環境でサッカーの話をしているので、だいぶ理解できるようになりました。ただ、語学に関しては永遠の課題です。

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――具体的なトップチームのコーチ業務は?

藤田:仕事をシンプルに伝えると、試合に勝つ準備をすることです。そのために、トレーニングのメニューを組んだり、トレーニングについてディスカッションをしたり、選手とトレーニングをしたり、コーチが集まって選手の状況を把握して、それについて議論したりという日々を過ごしています。

――コーチをしていて、心がけていることは?

藤田:一番に考えていることは、どうすればチーム、選手がレベルアップできるか、です。試合に勝つために、サッカーに対する情熱を持ち続けるために、選手に何を話せばいいか、どういう接し方をすればいいかを考えています。そこは監督とコーチとで、大きく違う部分ですね。ただ、僕の性格はコーチではなく、監督向きだと思います。もちろん、フェンロではコーチの仕事に徹していますよ(笑)。自分としては、早く監督をやりたい気持ちもあります。

――これまで多くの監督と接してきた中で、手本になるような人はいますか?

藤田:現役の頃は、自分を試合で使ってくれる監督が一番だと思っていました(笑)。さすがにいまは違った見方になっていて、長く続ける能力に長けた監督に注目しています。ファーガソンはマンチェスター・ユナイテッドで27年、ベンゲルはアーセナルで20年、監督を続けていますよね。どうやってモチベーションを保ち続けているのか。内部調整はどうやっているのかなど、非常に興味があります。一般的に、3年同じチームにいるとマンネリするところを、20年以上監督をしているわけですから、超人的といえるでしょう。

◆オランダリーグのIT化の現状

――昨年、藤田さんはスポーツITカンパニーのCLIMB Factoryとアドバイザー契約を締結されましたが、どのようなことをするのでしょうか?

藤田:契約したばかりなので、具体的なことはこれからになりますが、先日、CLIMB Factoryのスタッフにオランダに来てもらい、僕が普段、どのようなことをしているのかを見てもらいました。ほかにも、フェンロやADOデン・ハーグのクラブハウスに一緒に行って、クラブがどのようにITで選手を管理しているか、現場を見てもらいました。ADOは選手データの採取や解析、食事の内容も見せてくれて「こういうシステムを使っているよ」と、選手管理システムの説明もしてくれました。当然、練習も見学してもらい、フィジオが練習前にどう選手をケアするか。心拍数の最高値がどのくらいで、何秒で回復するか。それをどうやって計測して、分析しているかなど、かなり深い部分まで見ることができたので、CLIMB Factoryの方も「ここまで見せてもらって…」と驚いていました。

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――ヨーロッパの多くのクラブは、指導現場レベルでのIT化が進んでいるのでしょうか?

藤田:僕の知る限りですが、オランダリーグに関して言うと、コンディション面と戦術面に関してはITを使っています。それ以外の部分をどこまでカバーするかは、チームの資金力にもよります。コンディション面では、練習時に心拍数を測ったうえでトレーニングメニューと心拍数を照らしあわせ、回復する速度を考えたりしています。これくらいの強度のトレーニングをしたら、これくらいの疲労として身体に残るというのをデータとして採っています。あとは走行距離、走行エリア、走行速度なども計測しています。戦術面のデータ活用としては、練習場にカメラを設置して、すべてのトレーニングを撮影しています。その映像を見て、選手にポジションの指示を出すこともあります。フェンロの練習場にもカメラがあって、練習を録画しています。選手はそれをスマートフォンで見て、活用しています。

――藤田さんを始めコーチングスタッフは、トレーニングで採取したデータをどのように役立てていますか?

藤田:2週間に1回、コーチが集まって、選手の状況を話し合う場があります。そこではデータを見ながら「この選手は疲れ気味だから休ませよう」といった話をしています。ただ、そこに関してはデータを鵜呑みにするのではなく、肌感覚も交えて決断しています。データとマッチングして、ベストの状態を探っていく作業です。データは多いに越したことはありませんが、それをどれだけ活用して、選手に効果的に伝えるかがコーチの腕の見せ所だと思います。選手によっては、データを嫌う人もいます。選手の意見を聞かずに「データにこう出ているから」と押し切ると、選手に嫌われてしまいますよね(笑)。データを元にどう判断するか。選手との対話に説得力を出すために、データを使ってディスカッションをするとか。そのさじ加減が大切だと思います。


――今後、スポーツITの現場に、どのように関わっていきたいと考えていますか?

藤田:僕がオランダにいる間に、現役時代のつながりなども生かし、可能な限り自分の目で関わりを見てきたいと考えています。その経験を、色々な現場で紹介していきたいです。その結果として、日本のスポーツの役に立ち、人々の輪が広がっていけば嬉しいです。お互いが常にWIN-WINの関係になれることがベストですね! それもサッカーが持つ価値ですし、自分の役割でもあると思っています。(了)

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<プロフィール>
藤田俊哉(ふじた・としや)
1971年、静岡県生まれ。筑波大学卒業後、ジュビロ磐田に加入すると、1年目からレギュラーを獲得。ステージ優勝6回、年間優勝3回に貢献。2001年にJリーグMVPに輝くなど、ジュビロの黄金時代を作り上げた。2003年にはオランダ1部リーグのユトレヒトにレンタル移籍し、14試合に出場して1ゴールをあげた。2005年に名古屋グランパスに加入して日本に復帰。以降、ロアッソ熊本、ジェフユナイテッド千葉を経て、2012年に現役引退。2013年より、オランダ2部リーグのVVVフェンロでトップチームのコーチを務めている。

<関連リンク>
CLIMB Factory株式会社

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