2015.08.31 Mon

Written by EDGE編集部

アジア

【第21節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡「岡田武史とトルシエの中国2013シーズン」

写真:池田宣雄

近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポレートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ×ビジネスの観点から綴るエッセイ(アーカイブ)をお届けする。(文・写真 池田宣雄)

<初出:2013年11月第4号 ぽけっとページウィークリー

(編注:内容は全て原稿執筆時点2013年11月のもの)

2013年11月初旬、中国リーグの今シーズンの全日程が終了した。

トップリーグである超級(スーパーリーグ)では、アジア随一の莫大な資金を投じ、イタリアの名将マルチェロ・リッピ監督が率いる広州恒大が、24勝5分1敗という圧倒的な内容でリーグ3連覇を果たした。

リーグ戦を制した広州恒大は、この後、韓国のFCソウルとのAFCチャンピオンズリーグ決勝第2戦を控えており、中国サッカー史上初の3冠奪取に向けて、尚もコンディション調整に励んでいる。

今シーズンの全日程を終了した各チームの中から、日本にゆかりのある2つのチームをレビューする。

【中国超級(スーパーリーグ) 杭州緑城 8勝10分12敗 1部12位】

元日本代表監督の岡田武史監督率いる杭州緑城は、開幕から堅調なスタートを切ったものの、その後低迷。リーグ終盤には甲級(2部)への降格圏と僅差の13位(16チーム中)まで順位を落とし、岡田監督の去就問題が日本で報じられるなど、2シーズン続けての低迷となった。

そして全日程終了と共に、岡田監督の退任が正式に発表され、契約を1年残しての退団となった。発表当日の報道によると、岡田監督と同時に運営責任者の解任もあった模様で、表向きは岡田監督の家族の健康問題が理由に挙げられていたが、実際には成績低迷による更迭の感が拭えない。

まだ正式な発表はなされていないが、横浜Fマリノスからのローン移籍中の大黒将志も、岡田監督の庇護なき状況でのチーム残留はないものと思われる。

単年契約下にあるとされている日本人コーチ陣についても、浙江省代表として全国運動会に出場したU-18とU-20チームの成績も振るわず、若年代選手の育成についての費用対効果を問われる事は必至だ。合わせて10人程の日本人を雇用する事は、それなりの投資になっていた事が否めないからだ。

昨年、杭州緑城が岡田監督との複数年契約を締結した際には、大枚を叩いてビッグネームを掻き集める他のチームの強化方針を否定して、所属選手の強化と育成に主眼を置いた姿勢を打ち出し、強化と育成の為なら降格しても構わないくらいの談話を発していたが、実際にはそこまでの度量を経営陣は持っていなかったようだ。

【中国甲級(2部リーグ) 深圳紅鑽 15勝4分11敗 2部5位】

元日本代表監督のフィリップ・トルシエ監督率いる深圳紅鑽は、超級昇格を期しての甲級2シーズン目を戦い、リーグ中盤に順位を昇格圏内の2位に押し上げながらも、その後失速。最終的にリーグ5位で終了した。

トルシエ監督は、深圳紅鑽がまだ超級を戦っていた2シーズン前の開幕直前に3年契約で深圳に赴いた。かつては超級を制した事もある深圳紅鑽を、1シーズン目をリーグ最下位で終えて甲級に降格させる憂き目に遭い、超級昇格を掲げた昨シーズンと今シーズンもついに目標を達成する事が出来なかった。

3年契約を年末で満了するトルシエ監督だが、チームからは来シーズン以降の監督としての要請はなく、何か別の形での関係維持を提示されているようだ。深圳での報道によると、リーグ最終節から程なく個人的な身辺を整理して既に欧州に戻っている模様だ。このまま契約満了を迎える公算が高い。

かつての強豪も、現在の経営陣に買収されてからチームの戦績は下降線の一途を辿っている。報道によると、多分に漏れず給料の未払騒動が繰り返されるなど、現場の士気を著しく低下させる事象が目立っている。また、強化費用の捻出を渋り倒していた模様で、真っ当なチーム強化が図れるような状況ではなかったようだ。

来シーズンは、リーグ戦に挑む陣容が様変わりしているものと思われるが、トルシエ監督の下で、3シーズンに渡って孤軍奮闘してきた楽山孝志の去就も気になるところだ。筆者はまだまだ彼の勇姿を拝んでいたいのだが。果たして。

(編注:内容は原稿執筆時点2013年11月のもの)

ぽけっとページウィークリー

2013年11月第4号掲載コラム加筆修正

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<プロフィール>
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池田宣雄(いけだ・のぶお)
香港紫荊會有限公司・代表取締役社長。大学卒業後、物流大手営業職等を経て、32歳の時に香港で起業。コーポレートコンサルタントのかたわら、フットボールコーディネーターとして香港で活動している。香港サッカー協会会員。1970年生まれの45歳。

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