2015.05.24 Sun

Written by EDGE編集部

アジア

【第7節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡(アーカイブ)

近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポレートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ×ビジネスの観点から綴るエッセイをお届けする。(文・写真 池田宣雄)

<初出:2012年9月第2号 ぽけっとページウィークリー

このコラムを皆さんが目にする時点(編注:原稿執筆2012年時点)で、開幕した香港1部リーグは早くも第3節を迎えている。この原稿の締め切りが、リーグ第1節の開幕戦前日という事なので、今回は香港リーグのオフ期間を利用して行脚した、中国リーグの視察観戦について記したいと思う。

中国サッカー協会が主催する中国リーグは、広大な中国全土の隅々まで点在する58ものチームが、1部(スーパーリーグ)から3部(乙級)までの各カテゴリーでしのぎを削っている。香港に隣接する広東省内には、各カテゴリーに8つのチームが参戦している。

今夏、1部(スーパーリーグ)の試合を3試合、2部(甲級)を4試合、3部(乙級)を3試合視察した。日常的に観戦している香港リーグに抱いている心象を各会場に持ち込み、会場の雰囲気や競技レベルの対比を行なえた事は、サッカーの現場を語る上で非常に良い勉強になったと思う。

まず両リーグにおける圧倒的な違いは、試合が開催される競技施設のスケールにある。広州の2つの1部チーム(広州恒大と広州富力)は、共に6万人もの観衆を飲み込む巨大スタジアムを使用しているし、2部や3部チームの本拠地も、概ね2~4万人規模の収容能力を誇る。

皆さんもご存知のとおり、1部各チームの運営母体のほとんどを、中国各地の不動産開発会社が担っており、ここ数年の不動産バブルで蓄えた潤沢な資金を元手に、世界中の有名指導者やスター選手たちを獲得して、非常にレベルの高いリーグ戦を繰り広げている。

◆香港リーグをはるかに凌ぐ、中国リーグのレベル

1部リーグに限っては、おそらくアジアで最も高い水準の競技レベルと集客数を誇っていると思うし、有名な外国人スター選手のみならず、中国代表クラスの選手たちのレベルも非常に高く、外国人選手だけが目立つといったアジア特有のスタイルは、実は中国1部リーグには存在しない事が分かった。

2部リーグについても、スキルフルな外国人選手が活躍しており、また中国の若手選手についてもなかなかのキラ星級が存在している。リーグレベルも香港の1部リーグを遥かに凌ぐレベルだと感じた。所属選手たちの収入も競技レベルと同様に、間違いなく香港リーグを凌いでいるだろう。

そして今夏の視察で最も印象深かったのが、その下の3部リーグの戦いだった。入場料は無料。時に試合が公開もされない事があったが、外国人選手とは契約禁止の上、ベテランの中国人選手との契約にも人数制限が設けられており、これから芽の出そうな若手中国人選手のみでチームが構成されていたのだ。

ピッチ上の全員が中国国内の若手選手という事で、何か違いを生み出すようなプレーをする選手がいないため、実際には単調な試合展開ではあったが、出場選手たちの将来的な伸び代まで想像しながら観戦すると、かなり興味深い内容だったと言える。

3部リーグの試合会場の貴賓席には、各チームのスカウトが必ず姿をみせており、目的の選手たちのプレーを熱心に撮影したり、メモにペンを走らせている光景を目の当たりにした。それはまさしく商品見本市の様相だった。

中国のサッカー界は、件の八百長騒動を前後しての、長い低迷期を迎えている一方で、不動産バブルの人民幣が市場から一気に流入した事で、トップレベルの1部リーグから、徐々に復活の局面を迎えつつあるようだ。

クラブチームによるアジアの大会、アジアチャンピオンズリーグでの中国チームの台頭は容易に想像できるし、中国代表チームの復活の日も、そう遠くない頃に訪れるに違いないだろう。

ぽけっとページウィークリー

2012年9月第2号掲載コラム加筆修正

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<プロフィール>
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池田宣雄(いけだ・のぶお)
香港紫荊會有限公司・代表取締役社長。大学卒業後、物流大手営業職等を経て、32歳の時に香港で起業。コーポレートコンサルタントのかたわら、フットボールコーディネーターとして香港で活動している。香港サッカー協会会員。1970年生まれの45歳。

 

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