2015.04.24 Fri

Written by EDGE編集部

育成・トレーニング

【インタビュー】そのボトムアップ、本物ですか? 育成年代の指導者が語る、ボトムアップ本質論(2)

写真:Hirama Takashi

育成年代の指導現場において、注目されている指導法がある。それが『ボトムアップ』だ。これは指導者と選手が縦関係になるトップダウンではなく、選手主導 でチーム運営を行う方法で、安芸南高校の畑喜美夫監督が提唱し、全国で広がりを見せている。旧態依然とした上意下達指導のアンチテーゼとして、各地で導入 されているボトムアップ。今回はボトムアップ型の指導をいち早く導入し『選手たちの自主性を伸ばして、成長させる』手法で指導にあたる、幸野健一(アーセ ナルSS市川)、久保田大介(SUERTE juniors 横浜)、末本亮太(大豆戸FC)各氏にボトムアップの現状と課題を話してもらった。(聞き手・構成 鈴木智之 FootballEDGE編集長/写真 平間喬)

(前編はこちら)

――ボトムアップをやり始めて、チームにどのような変化がありましたか?

末本:子どもたちの変化としては、ピッチ内外で主張ができるようになったことがあります。ミーティングをしているので、『自分はこう思う』と主張するのが当たり前になってきました。以前は試合中、黙ってプレーする選手が多かったんですね。でもいま振り返ると、子どもたちが喋らないのは、実はコーチの存在や環境がそうさせていたのではないかと思っています。

久保田:末本さんが言うように、試合中に選手が喋らないのは、指導者が外からあれこれ言うからだと思います。すごく喋る母親の子どもは無口。それと一緒だと思います。僕の場合、数年前にボトムアップを取り入れた時は「ボトムアップをやるぞ」と全面的に出しすぎたこともあり「すべてを選手に任せなければいけない」というトップダウンになってしまったことがあります。選手もすべてを任されても嬉しいわけではないだろうし、負担に思うこともあったはず。いまは僕が選手たちに言ったほうがいいときは言うし、スタメン決めに参加することもあります。

幸野:選手にすべてを任せてやらせることがボトムアップかというと、決してそうではないんですよね。サッカーでも日常生活でも、最低限のことができるようになって、そこから先は任せればいいわけで。僕の考えでは、最低限のことができるようになるまでは指導者がファシリテーターとして、選手たちを導く。そこを放棄してしまうと、コーチの存在意義がなくなってしまいます。ある程度できるところまで引き上げて、そこまで到達できた子たちは、次のステップに行くことができるという形がいいと思います。

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久保田:僕の場合、選手たちと一緒にやるスタンスでいます。指導者と選手が上下の関係ではなく、横並び。常にその場に一緒にいる。ミーティングも一緒にいる。試合中も選手と一緒に熱くなる。ゴールを決めたら嬉しいので、ガッツポーズをして喜ぶ。それは一緒に戦っているからであって。その結果、選手がプレーをミスしてもイライラしなくなりました。自分自身の変化に驚いています。そうすると、選手たちがサッカー以外のこともめちゃくちゃ話しかけてくるようになりました(笑)。この前、学校でこんなことがあってさとか。

末本:その前はいろいろあったんでしょうね(笑)

久保田:前はコーチと選手の関係で『やらされているボトムアップ』だったのですが、いまはフレンドリーですよ。僕は女子サッカーの指導もしているのですが、女子に対して、細かくいちいち怒っていたら総スカンをくらうと思います。そこで鍛えられて、このスタンスができたと思います。でも、そのバランスは難しいです。

幸野:そこの線引きというか、スタンスは難しいですよね。選手に迎合するのとは違うわけですから。

久保田:そうなんです。ただ『この人はいつも自分たちの味方でいてくれる』というのは、小学生にも伝わっているのかなと思います。

末本:たしかに、それはありますね。

<次ページ>選手の能力を「引き出す」のではなく、「溢れ出す」ように仕向ける

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