2015.04.22 Wed

Written by EDGE編集部

インタビュー&コラム

【インタビュー】そのボトムアップ、本物ですか? 育成年代の指導者が語る、ボトムアップ本質論(1)

写真:Hirama Takashi

育成年代の指導現場において、注目されている指導法がある。それが『ボトムアップ』だ。これは指導者と選手が縦関係になるトップダウンではなく、選手主導でチーム運営を行う方法で、安芸南高校の畑喜美夫監督が提唱し、全国で広がりを見せている。旧態依然とした上意下達指導のアンチテーゼとして、各地で導入されているボトムアップ。今回はボトムアップ型の指導をいち早く導入し『選手たちの自主性を伸ばして、成長させる』手法で指導にあたる、幸野健一(アーセナルSS市川)、久保田大介(SUERTE juniors 横浜)、末本亮太(大豆戸FC)各氏にボトムアップの現状と課題を話してもらった。(聞き手・構成 鈴木智之 FootballEDGE編集長/写真 平間喬)

――本日、U-11、U-12のボトムアップの大会「任せれば、できる」が行われています。これは「選手主体で大会を行い、指導者や保護者は口出しをしない」をテーマに開催された大会とのことですが、どのようなきっかけで始めたのでしょうか。

久保田:最初に開催したのは2012年の12月です。その年の夏に畑喜美夫先生に会いに行き、ボトムアップについて知りました。高校年代は畑先生を中心にボトムアップが広がりつつありますが、ジュニア年代は一切ないという話を聞いて、じゃあジュニア年代は任せて下さいと。ボトムアップの発信も含めて、一回目の大会を2012年の12月に静岡県で行いました。そのときは畑先生と幸野さんにゲストに来て頂いて、ボトムアップについての講演をしてもらいました。

幸野:僕自身、自分の子育て(息子:幸野志有人/FC東京)も含め、育成年代の指導をしてきた方法論が、ボトムアップと非常に近いところがありました。それが『子どもを大人として扱い、信頼して任せる』ことです。子どもは僕ら大人が想像する以上の能力を秘めていますし、タスクを与えて責任を持たせることで、自立して成長していく姿を目の当たりにしてきました。1回目はまだアーセナルSS市川がなかったので、スピーカーとして、畑先生と一緒に講演をさせてもらいました。

末本:僕の場合は、選手たちを見ていくなかで「はたして、この子たちは自分たちで、好きでサッカーをしているのかな」と疑問を持つことがありました。そんなときに畑先生の本を読んで、こういう方法もあるのだと興味を持ったのがきっかけです。久保田さんや幸野さんとは以前から同じ志のもと親交もあり、ボトムアップの大会があることを知って、これは面白いから絶対に参加させてみようと思いました。うちのチーム(大豆戸FC)はその日、子どもたち主導で会場がある河口湖に行きました。もちろん引率のコーチはいたのですが、口出しはせずに付き添う形にしました。河口湖の最寄り駅で1時間ぐらい電車が来なかったことがあったのですが、この前6年生の卒業セレモニーのときに、そのことが思い出に残っていて、楽しかったと言う子もいました。自分たちでやる過程の中で行き当たるトラブルやイレギュラー、それこそが人生の醍醐味でありますから、それが思い出と語る子どもから、我々大人は多くのことを学ぶことができると思います。

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幸野:
ボトムアップの最初の大会で印象的だったことがあります。初日の夜に大浴場に行くと、子どもたち同士で明日の試合のメンバーを決めるミーティングをしていました。「自分たちで決めることができて楽しい」と言いながら、ワイワイやっていました。その光景を見た時に、これだけでもう十分な効果があるんじゃないかと思いましたね。

久保田:信頼して任せれば、幼稚園児でもできるんですよね。子どもたちは、任される喜びも感じるでしょうし。

幸野:子どもたちが自主的にミーティングしているのが、本来の姿なのかなとも思いました。子どもを過剰に子ども扱いせず、機会を与えれば、しっかりと応えてくれる。僕はそう思っています。日常を見ると、僕ら大人が言いすぎて、関わりすぎている現状がありますよね。そこで今回のような、子どもたちの自主性に任せる大会をすることで原点に帰る。それも大事なことだと思います。

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